ASBJでは2019年3月に新リース会計基準の開発が承認され、現在改正に向けた議論が続いています。
新リース会計基準の改正の方向性は、2021年度より適用の収益認識基準がIFRS15(顧客との契約から生じる収益)とほぼ同等になったことからも、新リース会計基準もIFRS16と大きな差異はなく改正されると考えられます。
ASBJより新リース会計基準開発にあたり、特に審議・検討を行うべき項目として6つの論点が示されています(表1参照)。
借手の費用配分のあり方 | IFRS16とTopic842で費用配分のパターンが異なるが、新リース会計基準ではどのように費用配分を行っていくのか。 |
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国際的な会計基準との整合性を図る程度 | 仮にIFRS16との整合性を図る場合、文言レベルか基本的アプローチのみか、現行基準を改定/廃止するのか。 |
サービスに関してリースの対象とする取引の範囲 | オペレーティングリースにおけるサービス提供の性格が強い取引において、新リース会計基準の適用が経済的実態を表すか。 |
延長オプションがある場合の比較可能性を担保する方策 | IFRS16とTopic842では延長オプションの行使可能性を「合理的に確実な期間」の閾値で評価することとされているが、適用上の判断の困難さが指摘されており、当該評価を行うにあたって比較可能性を担保する方策を検討する。 |
重要性に関する定め | IFRS16とTopic842は重要性の閾値を明示的に定めていないが、新リース会計基準では比較可能性を害しない範囲で採りうる方策をどのように検討するのか。 |
連結財務諸表と単体財務諸表の関係 | 単体財務諸表への適用において、周辺制度に与える影響や中小企業の連結子会社などにおけるコストなどを踏まえ、連結財務諸表と同一の扱いとすべきか。 |
また関係業界からの意見聴収も進んでおり、各業界の意見も念頭に、検討が進んでいます(表2を参照)。
公益社団法人 リース事業協会 |
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一般社団法人 日本船主協会 |
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日本チェーンストア協会 |
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一般社団法人 不動産協会 |
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公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会 サブリース事業者協議会 |
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これらの検討を踏まえ、2020年2月に基準開発の基本方針が公表され、IFRS第16号の単一モデルを基礎とし現行のリース会計基準の改正を進めることが確認されています。
約2年の基準開発の議論を踏まえ、2021年3月にASBJから公表された「現在開発中の会計基準に関する今後の計画」にて、公開草案の公表に向け審議を進めている旨の発表がなされ、現在公開草案の公表に向けた準備が進められています。
新リース会計基準の疑問に答えるQ&A
公開草案の公表に時間が掛かっている理由は何ですか?


基準開発の基本方針として、現行のリース基準を廃止するのではなく現行基準を改正する方向に舵が切られています。そうなると現行基準の文言を、IFRS16号と大きな差異が出ないよう調整する必要があるため、時間が掛かっていると想定されます。
単体財務諸表への適用も検討されているため、その場合には国税や中小企業への影響も踏まえた検討が必要になる点も、時間が掛かっている理由と想定されます。