2023/11/02
日本のリースに関する会計基準 第10回:適用時期の見直しの可能性を考察する
9月よりASBJにて、公開草案へ寄せられたコメントに対する審議が再開しています。
複数の審議事項がある中で最も注目をしたいのが、適用時期が見直されるかどうかです。
公開草案では適用時期に関して次の記載があります。
「本会計基準案等は、20XX年4月1日[公表から2年程度経過した日を想定している]以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する」
つまり、仮に2024年3月までに基準が最終化されると、2026年4月以降に開始する事業年度より強制適用、ということです。
一方で、公開草案のコメントを受けてASBJが9月21日に開催した第510回本委員会において、適用時期は「基準を最終化する時点で改めて検討する」と、再検討を示唆していて、寄せられたコメントの紹介として次の記載があります。
(1) 最低でも3年程度の準備期間を設けるべきである。
(2) 2年が十分な準備期間かどうかについて、対象法人の準備状況等を踏まえて改めて検討すべきである。
(3) 最低でも5年程度の準備期間を設けるべきである。
「準備期間が2年では短い」とコメントを寄せた、日本経済団体連合会と当社の意見を以下にご紹介しておきます。
日本経済団体連合会は「最低でも準備期間は3年」とコメント

日本経済団体連合会は、公開草案に対して次のコメントを寄せています。
「新リース会計基準でリース取引に該当する事になるすべてのリース取引について、関係会社も含めて網羅的に確認し、業務プロセス構築・システム対応を行うためには十分な準備期間が必要である。相当な準備期間が必要で、最低でも3年程度とすべきである。」
また、特に次の2点が問題として取り上げられています。
・システム対応の負担がより大きくなる点
・IT関連人材の不足による改修の遅れと対応コストの増加
参考:日本経済団体連合会からの公開草案におけるコメント(PDF)
当社は「適用までの準備期間は2年では短い」とコメント
当社は210社のユーザー様へアンケートを実施し、「基準公表から適用までの準備期間は3年以上が望ましい」と回答があった企業は全体の51%、という結果を踏まえてコメントを提出しました。その理由の上位3つはシステム改修、影響額試算、業務フローの変更であり、本会計基準は会計論点の整理に留まらず、システムと業務への影響から、相当な準備期間が必要だと想定されます。
執筆者プロフィール

株式会社プロシップ システム営業本部 取締役本部長 巽 俊介
2006年にプロシップに入社。
以来、大手・優良企業を中心としたお客様の数多くのソリューション提案に携わる。その現場で得た知見やノウハウをもとに、お客様の事例や現場の生の声を中心に固定資産の制度変更に関する情報を発信。
2014年からIFRS推進室長、2020年から制度対策推進室長、2023年からはリース会計ソリューション推進室長として最近は『日本国におけるリースに関する会計基準適用の影響と対応への勘所』をテーマにセミナー講師としても積極的に活動している。
