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2025/05/27

日本のリースに関する会計基準 第16回
IFRS適用企業の事例から考察する方針整理フェーズの重要性

2024年9月13日に公表された「リースに関する会計基準」(以下「新リース会計基準」)について、抜け漏れや無駄のない対応をするにはシステム導入前の会計論点整理や新業務プロセス策定などの方針整理次第といっても過言ではありません。

新リース会計基準は2019年から適用が始まったIFRS16号と同等の基準であるため、適用準備にあたってはIFRS適用企業が過去に実施したIFRS16対応事例がとても参考になります。当社の過去の100社を超えるIFRS適用企業の事例からも、方針整理が不十分な状態でシステム導入を進めた結果、様々な問題が発生し、システム導入におけるプロジェクトの大幅な遅延の要因にもなりました。
ここでは代表的な失敗事例をもとに、どのようなアプローチが適切かについて解説をします。

リースの識別や重要性に関する監査法人との合意

リースの識別や重要性について、どの範囲のリース契約までオンバランス対象とするか否かは最も重要な論点です。リースになるか否かの識別のフローチャートや金額基準等を用いて、監査法人と協議を重ねた上で決定する必要があります。
この論点における失敗事例として、オンバランス対象とする契約範囲の合意が監査法人と曖昧な中、強制適用までの残り期間が迫っていたため、並行してシステム導入を進めてしまったというものがあります。結果、後からオンバランスとする契約の範囲を会計監査人に指摘され、移行作業のやり直しが発生してしまいました。
この失敗を繰り返さないためにも、事前の会計方針の協議の段階で、リースの識別のフローチャートに沿って「リースの対象とするかどうか」の理論武装をした上で、他社事例等を用いて監査法人と合意をしていくことが重要です。

契約締結部門も含めた新業務フローの構築

不動産リースの管理については、現行基準ではほとんどがオフバランスであることから、Cashが関係しない限り経理部に情報が上がってこないのが一般的です。一方で、今後は不動産リースも固定資産と同じく契約締結と合わせて資産計上が求められるため、新たな業務フローを構築する必要があります。
この論点における失敗事例として、経理部のリソースも限られることから契約締結部門にもシステムを展開し、現場での入力を想定して要件定義を開始したものの、現場部門間での調整が進まず時間だけが浪費され、結局経理部だけが利用するスコープで再度要件定義をやり直した事例があります。
新リース会計基準では、現場では判断できない会計上の項目(延長オプション等)が複数あり、また現場にとって登録するメリットがないと正しくデータ登録が進まない実態があります。そのため、実務を踏まえた新業務プロセスの検討が重要です。

不動産リースにおける仕訳の要件検討

現状のリース会計基準では、ほとんどの企業がファイナンスリースで300万円以上の動産リースのみをオンバランスとしています。そのため従来は定期定額の一般的な仕訳のみの検討で問題はありませんでしたが、新リース会計基準では不動産リースも対象となるため、仕訳要件の検討に、想定以上の時間がかかることが予想されます。賃料は通常前払いであることや、フリーレントなど支払いが発生しない月の対応、また支払と会計システムとの整合性をとるための経過勘定の扱いなど、実務を想定した仕訳の要件検討が必要となります。
この論点における失敗事例として、定期定額の一般的なリース契約を対象に仕訳要件の検討を進めていて、不動産リースに関する要件検討が不足しており、後から仕訳パターンの再設定や連携テストが必要となった、というものがあります。
他社事例などを参考に、抜け漏れのない不動産リースにおける仕訳要件の検討も重要になります。

個人的な見解となりますが、年末に公表される予定の令和7年度税制改正大綱において法人税、消費税等の改正が入ると想定しています。また外形標準課税における純支払賃借料は、今後会計上のPL科目は「賃借料」から「減価償却費」と「支払利息」に変更になるため、何らかの改正が行われる可能性が高いと考えられます。

新リース会計基準の成功の鍵は、方針整理!

新リース会計基準の成功の鍵は、「方針整理」です。
しかし方針整理のフェーズでは、外部のアドバイザリーを活用する方法もある一方、自社単独で検討を進めていく企業も多くいらっしゃいます。そこで当社では過去の経験を活かし、上述した問題への対応も含め、方針整理を自社単独で進める企業をサポートすべく「方針整理支援コンテンツ」をリリースいたしました。その特徴は以下の3点です。

①難解な新リース会計基準に対応するためにプロシップが独自開発したコンテンツ

 ・会計基準を理解するための動画、資料、解説ページをご用意。
 ・現場に協力を求めるために必要な社内説明資料、調査票などのご提供。
 ・リース取引の調査から会計方針の策定までの、各プロセスに必要な幅広いコンテンツをご用意。

②プロシップによるIFRS適用企業100社超の実績を基にしたノウハウ

 ・リースの識別、リース期間など判断に迷う論点について、豊富な事例の参照が可能。
 ・豊富な実績から抽出された「課題に対する対応策」を各種コンテンツに盛り込んでいるため、
  無駄なく、漏れなく、負荷を抑えた対応が可能。

③対応にかかるコスト及び工数の削減

 ・自社単独で検討をする際の工数(対応時間)及び人件費の削減。
 ・検討の抜け、漏れをなくし、後続フェーズにおける戻り作業の発生を防ぐ。

本コンテンツはProPlusユーザー様(新リース会計影響額試算ソリューションご契約企業含む)に無償提供しております。
貴社の円滑な制度対応に是非お役立てください。

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執筆者プロフィール

株式会社プロシップ システム営業本部 取締役副本部長 巽 俊介

2006年にプロシップに入社。

以来、大手・優良企業を中心としたお客様の数多くのソリューション提案に携わる。その現場で得た知見やノウハウをもとに、お客様の事例や現場の生の声を中心に固定資産の制度変更に関する情報を発信。

2014年からIFRS推進室長、2020年から制度対策推進室長、2023年からはリース会計ソリューション推進室長として最近は『日本国におけるリースに関する会計基準適用の影響と対応への勘所』をテーマにセミナー講師としても積極的に活動している。

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