お役立ち情報 2021/12/08 日本のリースに関する会計基準 第2回公開草案公表になぜ時間がかかっているのか 連載記事_新リース 企業会計基準委員会(以下ASBJ)にて2019年3月にリースに関する会計基準(以下、新リース会計基準)の開発着手は決定されており、議論が進んでいますが、2021年12月現在で未だに公開草案すら公表がなされていない状況です。これまでの議論状況を踏まえて、私見となりますが公開草案公表に時間がかかっている理由と、今後の方向性について考察します。 現行リース会計基準の廃止ではなく、一部改正を選択 ASBJより2020年2月に、リース会計基準改正に関する基本的方針が示されています。その中では基準開発の方法として、現行のリース基準を廃止し新たにリース会計基準を開発するのではなく、現行のリース会計基準をベースに改正する方針が出されています。IFRS16(リース)のすべての定めを採り入れるのではなく、主要な定めのみを採り入れることにより、簡素で利便性が高く、かつ、IFRS第16号の定めを個別財務諸表に用いても、基本的に修正が不要となることを目指す、との記載もあります。 つまり今回の日本の新リース会計基準が適用となった際、連結財務諸表で既にIFRSを適用している企業は修正不要で本基準を適用できることを念頭に、議論が進んでいます。 新リース会計基準では、借手におけるオペレーティングリースの区分をなくして単一の会計処理にすることは勿論、リースの定義(適用範囲)やリース期間など、主要部分の改正が想定されます。しかし現行のリース会計基準をベースに改正を行うと、現行のリース会計基準の文言をIFRS16号と大きな差異が出ないよう調整する必要があるため、ここに相当の時間がかかっていると想定されます。 現在、日本におけるIFRSはあくまでも任意適用となっていますが、新リース会計基準がIFRS16とほぼ同じ基準になる場合、リースに関してはIFRS強制適用と同等のインパクトがあることに注意が必要であり、IFRS16を既に適用している企業の開示情報は先行事例として有益であると考えられます。 連単一致の会計処理をするための利害調整 連結と単体の関係について、現在単体財務諸表において周辺制度に与える影響や中小企業の連結子会社などにおけるコストなどを踏まえ、連結財務諸表と同一の扱いとすべきかの議論が続いています。 ASBJの中期運営方針には、「原則として、開発された会計基準は連結財務諸表と単体財務諸表の両方に同様に適用されるものとして開発してきており、今後も、その方針に変わりはない」とする一方で 「単体財務諸表は、関連諸法規等の利害調整に関係することが連結財務諸表よりも多いと考えられるため、個々の会計基準の開発においては、これらを考慮の対象とし検討を行う」との記載があります。これまでの議論を踏まえ、連結は単体の積み上げとするのが原則であると考えるため、2021年度より適用となった収益認識基準と同様に、中小企業等に対しては重要性に関する代替的な取り扱いをおくことで、連単一致の会計処理になると想定されます。但し、日本は確定決算主義で会計と税務が強く結びついており、リース会計基準の改正がなされた場合に税制の改正がなされないと乖離が生じ、申告調整が必要となるため、この辺りの制度面も含めた検討に時間がかかっていると想定されます。 リース会計基準の改正にあたっては税務との乖離がどの程度になるのか、この点は業務に与える影響が大きいため注視していく必要があります。 執筆者プロフィール 株式会社プロシップ システム営業本部 本部長 巽 俊介 2006年にプロシップに入社。 以来、大手・優良企業を中心としたお客様の数多くのソリューション提案に携わる。その現場で得た知見やノウハウをもとに、お客様の事例や現場の生の声を中心に固定資産の制度変更に関する情報を発信。 2014年からIFRS推進室長、2020年から制度対策推進室長として最近は『日本国におけるリースに関する会計基準適用の影響と対応への勘所』をテーマにセミナー講師としても積極的に活動している。 お役立ち情報の一覧 に戻る 関連製品 ProPlus固定資産システムノウハウを集結し、あらゆる業種・業態の企業にマッチする固定資産管理機能を豊富に搭載。企業のIFRS適用も強力に支援。詳細を見るProPlusリース資産管理システム契約/物件情報管理、支払管理、開示資料作成などリース管理業務全般を効率化。詳細を見る 導入事例 各業界の大手企業、2社に1社がProPlusを採用しています。上場企業を中心に、あらゆる業種、業態、規模の企業に幅広く導入されています。 導入事例を見る セミナー情報 プロシップでは定期的に、固定資産管理に関連するセミナーを開催しています。 セミナー情報を見る