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2022/04/15

日本のリースに関する会計基準 第3回
現行リース会計基準で認められている重要性基準は引き継がれるのか

リースに関する会計基準(以下、新リース会計基準)はIFRS16号の内容をベースに議論が進んでいますが、現行のリース会計基準で認められている重要性基準(図1参照)が引き続き認められるかどうかが、実務上の大きな論点となります。
これまでのASBJ(企業会計基準委員会)の議論内容をふまえると引き継げるものは継続するスタンスが垣間見えるため、現時点のASBJの事務局提案を基に、重要性基準に関する今後の方向性を考察します。

なお記載内容は私見であるため、今後の公開草案、最終基準書の策定にあたり変更される可能性があることをご了承ください。

図1 現行リース会計基準における重要性に関する定め
少額リース資産の簡便的な扱い 次のいずれかを満たす取引は、通常の賃貸借処理に準じて会計処理を行うことができる(リース適用指針第34項及び第45項)。

 

① ファイナンス・リースにおいて、重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、(個々のリース物件の)リース料総額が当該基準額(購入時に費用処理することとしている金額)以下のリース取引。
② 所有権移転外ファイナンス・リース取引のうち、企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引で、リース契約 1 件当たりのリース料総額が300 万円以下のリース取引。

リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合の利息相当額の取扱い 所有権移転外ファイナンス・リース取引について、未経過リース料の期末残高が、当該期末残高、有形固定資産の期末残高及び無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合に、次のいずれかの方法を適用することができる(リース適用指針第31項から第33項)。

 

 ① リース料総額から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法
 ② 利息相当額の総額のリース期間中の各期への定額法による配分

 

短期のリース取引の簡便的な取扱い ファイナンス・リース取引のうち、(合意された)リース期間が 1年以内のリース取引については、通常の賃貸借処理に準じて会計処理を行うことができる(リース適用指針第34項、第35項(2)、第45項及び第46項(2))。

300万基準は、現行基準を引き継ぐ方針

企業会計基準委員会(2021年12月20日開催)において、少額リース資産の扱いは現行基準を引き継ぐことが提案されています。
現行のリース適用指針は、企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリース取引について簡便的な取扱いを認めています。IFRS第16号においても、新品時に5千米ドル以下の原資産について、リース1件ごとに簡便的な取扱いを選択適用できるとされていることから、新リース会計基準においても少額リース資産に関する簡便的な取扱いを認めることが考えられます。一方で、これまでオペレーティング・リースに区分されていた多くの不動産のリースについては、金額基準の観点からも簡便的な取扱いの対象となるものは多くはないのではないかと考えられます。

利息相当額の取り扱いも現行基準を引き継ぐが、範囲が一部変更

企業会計基準委員会(2021年12月20日開催)において、利息相当額の扱いは現行基準を引き継ぐ(但し範囲は変わる)ことが提案されています。

利子込み法又は利息定額法の簡便的な取扱いは、IFRS第16号及びTopic842のファイナンス・リースでは設けられていない取扱いです。しかしながら、これらの簡便的な取扱いは、実務の追加的な負担を軽減することを目的として導入されたものであり、実務において浸透していることから、同様の趣旨の簡便的な取扱いを引き継ぐことが考えられます。すなわち、未経過リース料の期末残高に重要性が乏しい場合、利子込み法又は利息定額法を認めることが想定されます。
但し、対象範囲の拡大(従来のオペレーティングリースも含む)により、新リース会計基準においては重要性判断の算式に含まれる項目の範囲が変わることに注意が必要です。

短期リース及び再リースの扱いも、現行基準を引き継ぐ方針

企業会計基準委員会(2021年12月20日開催)において、短期リースの扱いは現行基準を引き継ぐことが提案されています。
現行のリース適用指針、IFRS第16号及びTopic842のいずれにおいても短期(リース期間が1年以内)のリースに関する簡便的な取扱いが認められていることから、新リース会計基準においても短期のリースに関する簡便的な取扱いとして、通常の賃貸借に準じて会計処理を行うことを認めることが考えられます。
合わせて企業会計基準委員会(2022年1月12日開催)において、再リースの簡便的な扱いは、現行基準を引き継ぐことが提案されています。我が国固有の商慣習であり、この取扱いが実務において浸透している中で特段問題が聞かれていないことから、現行のリース適用指針を適用している企業においては、継続することを認めることにより、追加的な負担を減らすことができると考えられます。

執筆者プロフィール

株式会社プロシップ システム営業本部 本部長 巽 俊介

2006年にプロシップに入社。

以来、大手・優良企業を中心としたお客様の数多くのソリューション提案に携わる。その現場で得た知見やノウハウをもとに、お客様の事例や現場の生の声を中心に固定資産の制度変更に関する情報を発信。

2014年からIFRS推進室長、2020年から制度対策推進室長として最近は『日本国におけるリースに関する会計基準適用の影響と対応への勘所』をテーマにセミナー講師としても積極的に活動している。

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