2022/06/16
日本のリースに関する会計基準 第4回:リースに関する会計基準が財務諸表に及ぼす影響
リースに関する会計基準(以下、改正リース会計基準)はIFRS16号の内容をベースに議論が進んでいますが、同等の基準となった場合の財務諸表に及ぼす影響を考察します。
なお、既にIFRS適用企業は2019年度よりIFRS16号を適用した開示を行っていますが、影響の大きい企業ではIFRS16号適用により資産と負債の残高が約2倍に増加しています。これらの殆どは不動産リースのオンバランス化に伴うものであり、その影響の大きさが垣間見えます。実務においても、将来債務の資産化に伴い減損リスクが増加し、減損テストの頻度が増えるなどの影響も想定されます。
この機会にぜひ同業種のIFRS適用企業におけるリースの開示事例を参考に自社に与える影響を確認されることを推奨します。
ROAはすべての企業で下がる
ROA(総資産利益率)は、会社の総資産を利用してどれだけの利益を上げられたかを示す指標です。改正リース会計基準の適用により、利益には殆ど影響はありませんが、オペレーティングリースのオンバランス化に伴い総資産は増加します。 この結果、ROAは本基準を適用する企業全てで低下することが想定されます。そのため、中期経営計画などでROAを開示している場合など、影響が大きい場合は見直しも含めた検討をする必要があります。

支払リース料が減価償却費と支払利息に変更することの影響
主要な財務指標であるEBITDA、営業キャッシュフロー、営業利益は全て増加します。
EBITDAは企業価値評価の指標であり、税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益を指します。 国によって金利水準、税率、減価償却方法などが違うため、国際的企業の収益力は一概に比較することはできません。その点、EBITDAはその違いを最小限に抑えて利益の額を表すことを目的としており、国際的な企業、あるいは設備投資が多く減価償却負担の高い企業などの収益力を比較・分析する際に用いられます。改正リース会計基準の適用により、費用科目がこれまでの支払リース料からオンバランスにより減価償却費と支払利息にかわることから、EBITDAは増加します。
また、キャッシュフローにおいては、これまでの支払リース料は営業キャッシュフローに該当しますが、オンバランス化に伴いリース債務の返済となり、財務キャッシュフローに該当することになるため、その結果、営業キャッシュフローは増加します。 合わせて、支払リース料はPL上、販売費及び一般管理費などで計上されますが、オンバランス化に伴い、支払利息は金融費用(営業外費用)に該当することになるため、結果として支払利息分は営業利益を押し上げる形になります。
執筆者プロフィール

株式会社プロシップ システム営業本部 本部長 巽 俊介
2006年にプロシップに入社。
以来、大手・優良企業を中心としたお客様の数多くのソリューション提案に携わる。その現場で得た知見やノウハウをもとに、お客様の事例や現場の生の声を中心に固定資産の制度変更に関する情報を発信。
2014年からIFRS推進室長、2020年から制度対策推進室長として最近は『日本国におけるリースに関する会計基準適用の影響と対応への勘所』をテーマにセミナー講師としても積極的に活動している。
