2023/06/10
日本のリースに関する会計基準 第8回:会計上のリース期間の設定
リースに関する会計基準(以下、改正リース会計基準)の公開草案によると、借手のリース期間についてはIFRS第16号の定めと同様に、解約不能期間+行使することが合理的に確実である延長オプション期間及び借手が行使しないことが合理的に確実である解約オプション期間と定義されています。
つまり契約書に記載の契約期間=会計上のリース期間にならない可能性があることに注意が必要です。
普通借地権の延長オプションは実質的に制限はない!?
不動産リースにおける延長オプションは日本の借地借家法上、借り手側が強く保護されているため、定期借地権は20年など存続期間の設定がなされていますが、普通借地権は借り手側が更新を希望する限り、継続し続けることが可能なため、実質的に延長オプションの制限はないと捉えることができます。
そのため、契約期間=会計上のリース期間としない場合、借り手のリース期間において延長オプションをどの程度考慮するかで影響額が大幅に変わってくるため、慎重な検討が必要となります。
資産除去債務の除去費用の償却期間や建設協力金の返済期間との整合性にも注意が必要?

資産除去債務に関しては適用指針25項に次の記載があります。
「資産除去債務を負債として計上する場合の関連する有形固定資産が使用権資産であるとき、当該負債の計上額と同額を当該使用権資産の帳簿価額に加える」
次に建設協力金に関しては適用指針26項に次の記載があります。
「預り企業である貸手から、差入企業である借手に将来返還される建設協力金等の差入預託保証金に係る当初認識時の時価は、返済期日までのキャッシュ・フローを割り引いた現在価値である。差入企業である借手は、当該差入預託保証金の支払額と当該時価との差額を使用権資産の取得価額に含める」
いずれも使用権資産の取得価格に含めることを要求しています。
一方で改正リース会計基準にてリース期間は解約不能期間+行使することが合理的に確実である延長オプション期間及び借手が行使しないことが合理的に確実である解約オプション期間と定義されています。
そのため、使用権資産の会計上のリース期間を決定する過程においてはこれらの基準の整合性を踏まえた検討が必要となることに留意が必要です。
執筆者プロフィール

株式会社プロシップ システム営業本部 取締役本部長 巽 俊介
2006年にプロシップに入社。
以来、大手・優良企業を中心としたお客様の数多くのソリューション提案に携わる。その現場で得た知見やノウハウをもとに、お客様の事例や現場の生の声を中心に固定資産の制度変更に関する情報を発信。
2014年からIFRS推進室長、2020年から制度対策推進室長、2023年からはリース会計ソリューション推進室長として最近は『日本国におけるリースに関する会計基準適用の影響と対応への勘所』をテーマにセミナー講師としても積極的に活動している。
