2023/08/13
日本のリースに関する会計基準 第9回:リースに関する会計基準の公開草案に関するコメントが公表
8月9日にリースに関する会計基準(以下、改正リース会計基準)の公開草案に関するコメントがASBJのホームページにて公表されました。
主要監査法人やリース会社からのコメントが寄せられるなか、当社プロシップも我が国における今般の改正リース会計基準の円滑な適用に資するため、当社顧客 210 社のアンケート調査に基づき、事業会社からの回答を中心にコメントを提出しております。
適用に際しての主要論点になることが想定されるため、当社コメントについてその概要をご紹介します。
コメントの詳細はASBJのサイトよりご参照ください。
※なお、コメントに対するASBJからの回答は今後公表されますが、コメントが採用されない場合もありますので、あくまで参考情報としてご参照ください。
社宅管理など重要性がない場合の簡便的な扱いの明記

本会計基準では300万基準や利息相当額の取り扱いなど重要性の観点で現行のリース会計基準を踏襲する旨の記載がありますが、次に記載する重要性の観点も公開草案に明記いただくことを提案しています。
①社宅に関する取り扱い
社宅は企業が営利目的で保有するものではなく、社員の福利厚生を目的とするものであり、社宅の計上額が企業の将来キャッシュフローに影響を与えることはほとんどないと考えられます。また、仮に社宅を資産計上する場合、「住宅手当」や「家賃補助」の名目で福利厚生費に含まれている物件が資産計上されないこととの間に問題が発生します。そのため社宅のように「企業の事業に照らして質的重要性」がない場合には、本会計基準を適用しないことができる旨を明記していただくことを提案しています。
②利息相当額の取り扱い
利息相当額の会計処理はすべてのリースについて当該会計処理を行う旨、明記があります。一方で少額リースに関しては重要性の基準が契約毎に認められています。そのため、利息に関しても一律の適用ではなく、契約毎に利息の金額に重要性がない場合、簡便的な取扱いを選択出来る旨を明記していただくことを提案しています。
③賃貸借契約に関して満了又は解約時の日割計算
不動産賃貸借契約において、満了又は解約時の最終回の支払いが日割計算による支払いになると、計上しているリース債務とは金額が一致しません。しかしその都度見積変更処理が必要となると運用が回らない懸念があります。そのため、差額に重要性がないと判断できる場合、本会計基準を適用しないことができる旨を明記していただくことを提案しています。
改正リース会計基準の適用までの準備期間は2年では短い
当社アンケートの回答内容では、基準公表から適用までの準備期間は3年以上が望ましいと回答があった企業は全体の 51%となります。その理由の上位3つはシステム改修、影響額試算、業務フローの変更であり、会計論点の整理に留まらず、システムと業務への影響から相当な準備期間が必要と想定されます。そのため本会計基準の円滑な適用にむけ、基準公表から適用までの準備期間は 3 年以上設けることを提案しています。
クラウドサービスがリースに該当するかどうかの明確化
クラウドサービスは資産が特定できるプライベートクラウドなどを除き、一般的に資産は特定されていない(サプライヤーが使用期間全体を通して資産を代替する実質上の能力を有しており、かつ資産の代替により経済的利益を享受する)ため、契約にリースは含まないと定義することができると考えられ、リースに該当しない旨の設例の追加を提案しています。
執筆者プロフィール

株式会社プロシップ システム営業本部 取締役本部長 巽 俊介
2006年にプロシップに入社。
以来、大手・優良企業を中心としたお客様の数多くのソリューション提案に携わる。その現場で得た知見やノウハウをもとに、お客様の事例や現場の生の声を中心に固定資産の制度変更に関する情報を発信。
2014年からIFRS推進室長、2020年から制度対策推進室長、2023年からはリース会計ソリューション推進室長として最近は『日本国におけるリースに関する会計基準適用の影響と対応への勘所』をテーマにセミナー講師としても積極的に活動している。
