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2024/07/12

固定資産管理の棚卸しとは?目的や方法を解説


固定資産管理の棚卸しは、人員や時間など多くのリソースが必要になる大変な業務です。しかし、固定資産管理帳簿と物品の付け合わせを行うこの作業は、企業にとって避けられない重要な作業となります。

本記事では、特に棚卸しの負担がかかる固定資産の管理担当者が知っておきたい、棚卸しの基礎知識について解説します。棚卸しの方法、目的、注意点について知りたい方は、是非参考にしてください。

固定資産の棚卸しとは


固定資産の棚卸しとは、企業が保有している固定資産の状況を正確に把握して、管理帳簿を最新版にアップデートすることです。固定資産の種類は多岐にわたります。例えば、オフィスや土地といった不動産、社用車、業務で利用している設備、スタッフが使用するパソコンや机などもすべて固定資産です。このように固定資産には高額なものが多く、管理帳簿との物品の整合性をとって内容を把握するのは、企業を運営していく上で重要であるのがわかります。

また、固定資産管理の棚卸しは、固定資産帳簿に記載されている固定資産が実際の物品と一致しているかどうかをひとつずつ確認する作業です。そのため、棚卸しには非常に多くの時間がかかります。

とはいえ、固定資産の管理では必ず現物チェックを行う必要があるため、避けて通ることはできません。資産の価値を適切に評価し、企業の内部統制を強化するためにも重要な業務として行われています。

固定資産の棚卸しの目的


正確に固定資産を把握し減価償却費を計算するため

企業は減価償却が必要な固定資産を多数保有しています。減価償却とは資産を利用する年月が経過していくほど資産価値が減っていくという考えです。会計の処理では資産価値が減った分を資産の購入価格から引いて、帳簿価額を算出します。そのため、時間が経過しても価値が下がらない資産は減価償却の対象になりません。例えば、機械や車などは減価償却の対象、土地や借地権などは対象外です。減価償却を行う資産のことを、償却資産と呼びます。

正しく減価償却費を計算するには、「固定資産の正確な状況」を把握することが必須です。そのために大切なのが、定期的な棚卸しの実施です。

設備や機器等を含めた固定資産税を算出するため

固定資産には固定資産税がかかります。固定資産税とは企業が所有している固定資産(土地、家屋、償却資産)にかかる税金のことで、資産の評価額に基づいて税額が決定されます。ちなみに設備や機材などの償却資産に対する固定資産税は「償却資産税」とも呼ばれていますが、これは通称のようなもので税務上正式な名称ではありません。

固定資産税の算出にあたり資産の情報を役所が把握する必要がありますが、土地と家屋の情報は、登記や現地調査等によって既に役所が把握しています。しかし償却資産の情報は、企業が自社の保有資産を役所に申請しなければなりません。そのため、棚卸しによって正確に固定資産を把握します。

もし、棚卸しを行わずに間違った固定資産を申告した場合、実際よりも多すぎる、もしくは少なすぎる税金を払うことになるでしょう。払う必要がなかった税金を納めるリスクを棚卸しによって回避できます。償却資産である設備や機器などは使用年月等で価値が変わるので、適切に価値を算出することが大切です。

セキュリティを強化し外部への流出や紛失等を防ぐため

外部への流出や紛失などを防ぐためのセキュリティ強化にも、棚卸しは役立ちます。固定資産は事業で使用するための財産であるため、盗難や紛失、破損などのリスクを防ぐことも求められます。万が一、このようなリスクが起こったときも、固定資産を適切に管理できていれば、事故原因の特定やその後の追跡もスムーズに行いやすくなるでしょう。

棚卸しは盗難や紛失を未然に防ぐ効果も期待でき、さらにリスクが起こったときもスピーディーに対応しやすくなります。また、棚卸しでは物品のチェックを行うため、現場で物品を扱っているスタッフの管理意識を高める効果もあります。日ごろから管理意識が高まり、物品に変化があったときにすぐに対応する習慣が身に付けば、固定資産管理の精度が上がります。

帳簿に不要な資産や記載のない固定資産がないか把握するため

固定資産の棚卸しは、不要な資産や固定資産帳簿に記載されていない資産の洗い出しにも役立ちます。固定資産帳簿は常に最新の情報を保っているのが理想ですが、業務を行っていくうちに少しずつズレが生じてくるものです。棚卸しを行うことで、前回の棚卸以降に発生した物品と帳簿との違いを把握し、正しい資産管理状況に修正できます。

さらに、棚卸しを通して不要と判断した資産を廃棄して節税を行ったり、忘れられていた資産の再利用を行ったりと、全体的な経費削減を目指すことも棚卸しの目的と言えるでしょう。また、不要なだけでなく古くなって買い替えや修理が必要な資産を特定して、対応を検討することも可能です。

固定資産の棚卸しの方法


「実地棚卸し」とは現物確認しながら状態等を記録すること

実地棚卸しとは、物品そのものを確認しながら資産の状態を記録していくことです。

担当者が直接現場に行き、実物の商品や備品を目で見て確認します。数量だけでなく、状態も細かくチェックするのが特徴です。「現物確認」や「現物実査」という表現も同じ意味で使われますが、単に「棚卸し」と言った場合、多くの場合この実地棚卸しを指します。

実地棚卸しでは、物品ひとつひとつにシールやステッカーといった管理用のラベルを貼り付けておくと、作業が終わったものがわかりやすくなるのでおすすめです。現物の固定資産と帳簿を照合しながら、細かい物品の状況を記録しておけば、買い替え、修理、廃棄の判断などにも役立てられます。

帳簿にあるにもかかわらず、物品がない固定資産がある場合は、廃棄の記録忘れや間違えて別の資産を廃棄処理している可能性があります。実地棚卸しを通して、新たに判明する事項は多いです。相違があった場合は原因を解決して正しく帳簿を更新することで、資産管理の精度を向上できます。

固定資産の棚卸しの流れ

帳簿に記載している固定資産に管理ラベルを貼り付ける

固定資産を取得した際には、帳簿に記載してある固定資産に管理ラベルを貼り付けます。管理ラベルには、資産の名前や識別番号、資産取得日といった情報を記載しておきます。管理ラベルを貼っておくと資産を特定しやすくなるため、チェック漏れや見間違いのリスクの予防が可能です。

先述したチェック済みの資産には済シールを貼り付けるなどの工夫をすれば、さらにミスを減らすことができるでしょう。また、管理ラベルはミスの防止だけでなく、資産の移動や状態の推移を追いやすくなるので資産管理の効率化が図れます。

棚卸表を作成し、配布する

固定資産の現物確認を効率的に行うには、作業の適切な区分けと準備が重要です。通常、現場や物品カテゴリごとに作業を分けて実施します。すべての資産が記載されたリストを使用しながら作業を行うと、目的の物品を探すのに時間がかかり、非効率的です。

そこで、担当者別にピックアップしてリストにした棚卸表を準備します。棚卸表を作成する際は、できる限り資産の写真を掲載しましょう。名称や管理番号から目的の物品を探すより、視覚的な情報があったほうが作業効率が大きく向上します。

帳簿の固定資産が現物として存在するか照合する

次は帳簿の固定資産が間違いなく現物として存在しているかの照合作業に入ります。管理ラベルを貼った固定資産と帳簿(固定資産台帳や棚卸表)と見比べてチェックしていきましょう。もし、一致しない資産が出てきたら帳簿を更新するため、不一致が起きた原因を調査していく必要があります。帳簿に記載があるのに現物がない場合は、現物を探しましょう。

もし見つからない場合は、紛失扱いとなります。逆に現物があるにもかかわらず、帳簿に登録されていなければ、その物品が本当に固定資産扱いで間違いないのか、条件をもう一度確認しましょう。照合作業を繰り返し、すべての物品の照合を完了させます。

過不足分の固定資産を確認したら帳簿を更新する

すべての実地棚卸し作業が完了したら、帳簿を最新情報にアップデートします。帳簿に不足している資産の調査や帳簿にない資産の原因の特定が終わったら、必要に応じて帳簿を変更してください。実地棚卸し作業だけでなく、帳簿の更新作業も手作業で行うとかなりの時間がかかります。手入力は誤入力や記入漏れなどの人的ミスも発生しやすいので、効率よく実地棚卸しを行いたい場合は、専用の管理システムを導入するのもおすすめです。

実地棚卸専用システムなら、バーコードの付いた管理ラベルをスキャンするだけで、自動で帳簿との突合作業を行うことなども可能です。管理システムによって価格や機能の違いはありますが、検討してみる価値はあるでしょう。

固定資産の棚卸しの注意点

固定資産の棚卸しの抜け漏れがないか

固定資産の棚卸しは抜け漏れがないかどうか、慎重にチェックを行いましょう。固定資産が多い場合は、棚卸しで完璧に資産をチェックするのが難しい場合もあります。抜け漏れがあると正しい固定資産を把握できなくなり、固定資産税の申告や決算報告に影響を及ぼします。正しくスムーズに棚卸しをするには、現場の管理体制を整備して日ごろからしっかり資産管理を行えるよう意識を高める工夫も必要です。

また、全社が同じルールで実施できるように、マニュアルの作成や講習会の実施などを行うのもおすすめです。棚卸し後に不備に対応するより、日常的に細かく管理や修正を行う方が固定資産管理の精度も上がります。

帳簿に入力したデータにミスがないか

固定資産の棚卸しを行う際には、帳簿に入力したデータにミスがないか、必ず確認しましょう。データ入力にミスがあると、正しい資産の評価が行えなくなります。数値の入力ミスだけでなく管理ラベルを手書きで入力していた場合は、見間違いで違った数値を記入してしまう可能性があります。例えば、「6と0」「3と8」などは書き手の文字によっては読みにくいケースがあるでしょう。

そのため、棚卸しで扱う数値や情報はできる限りデジタルで管理するのが理想です。どうしても手作業が入る場合は、複数の担当者でダブルチェックをするといった対策も必要です。データのミスは起こさないといった意識のもと、正しく入力できるように心がけていきましょう。

棚卸しにかかる費用が想定より膨らんでいないか

棚卸しにかかる費用が想定より膨らんでいないかの確認も棚卸し業務では重要なポイントです。棚卸し作業は人件費や使用するツールなどに大きなコストがかかります。そのため、棚卸しは必須ではあるものの、実施にかかる費用の見直しも必要です。特に人件費については見えない費用となりがちなので注意が必要です。

前述の通り、固定資産の棚卸には資産を1件ずつ現物チェックするため、多くの人的リソースを必要とします。そのため、管理部門のスタッフや現場作業員など、多くの従業員が相当な時間を費やすことになります。

棚卸に人件費がかかりすぎる場合は、棚卸専門システムを利用することで解決できる可能性もあります。システムの利用には費用が掛かりますが、代わりに作業時間が大幅に短縮できれば、これまでより費用を抑えることも可能となるでしょう。

まとめ


固定資産を管理するためには、定期的な棚卸しは必須業務です。正しい会計処理や税の申告を行うためには、避けては通れない業務だとも言えます。とはいえ、棚卸しをすべき資産が膨大な場合は、棚卸し自体を行うためのコストが大きな負担になります。

現在、自社の棚卸しを手作業で行っているなら、少しでも固定資産管理システムや現物管理ツールなどを活用してみることをおすすめします。管理ラベルをバーコードで読み取るだけでも、入力ミスなどは格段に減るはずです。正しい固定資産管理を行うためにも、素早く正確な棚卸しの方法を検討していきましょう。

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