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2024/12/06

IFRS16号(リース)とは?全リースのオンバランス化による変化や必要な準備を解説

国際財務報告基準であるIFRSは、グローバルスタンダードとされている会計基準です。

IFRS16号は、2019年1月1日以降に開始する事業年度から適用されているリースの基準です。IFRSを適用している企業は強制的に適用され、企業のリース取引の会計処理に大きな変革をもたらすため、その影響力を適用前にチェックする必要があります。

本記事では、IFRS16号(リース)の定義や全リースのオンバランス化による変化、必要な準備について詳しく解説します。IFRSの適用を検討されている企業はぜひ参考にしてください。

IFRS16号(リース)とは

賃借料と書かれたブロック、電卓、ミニチュアの建物

IFRSとは、International Financial Reporting Standardsの略語であり、グローバルスタンダードとされている国際財務報告基準のことです。

会計基準は国ごとに異なりますが、国をまたいで決算を比較するための世界基準として策定されました。ここでは、IFRSとIFRS16号について、IFRS16号のリースの定義について詳しく解説します。

IFRSとIFRS16号について

IFRSは国際財務報告基準であり、グローバル化が進む経済環境において必要な国際的な会計基準です。国ごとに異なる会計基準が統一化されることで、財務諸表の比較可能性の問題を解決し、透明性の高い財務情報の提供が実現できます。

IFRSの特徴の一つは、原則主義であることです。具体的な数値基準を示さないケースが多く、企業独自の判断と判断根拠の説明が求められます。

IFRS16号はIFRSの中でリース取引に関する会計処理を規定した基準です。2016年1月に公表され、2019年1月1日以降に開始する事業年度から適用が開始されています。IFRS16号の主な特徴は、従来のオペレーティング・リースとファイナンス・リースの区分を廃止し、原則としてすべてのリース取引をオンバランス化したことです。これにより、借手は使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上することになります。

IFRS16号の導入により、すべてのリース取引がオンバランス化されたことで、企業の財政状態が明確になるうえに、リース取引の会計処理が統一され、企業間の比較が容易になるという効果が期待されています。

ただし、IFRS16号の導入には課題もあります。多くの企業にとって、システムの変更や新たな見積りに伴う資産・債務の調整処理など、大規模な対応が必要になるでしょう。そのため、導入コストがかかり、対応を担当する人員確保や稼働時間の確保なども検討しなければなりません。また、財務指標への影響も大きいため、経営戦略の見直しが必要になる可能性もあります。

このように、IFRS16号の導入においては、課題の解決と得られる効果がある一方、新たな課題も生まれます。これらを踏まえて、IFRS導入の検討をしましょう。

IFRS16号におけるリースの定義

IFRS16号では、リースを「一定期間にわたり、対価と交換に資産(原資産)を使用する権利を移転する契約または契約の一部分」と定義しています。

この定義は、従来のリース基準であったIAS17よりも広範囲になっており、より多くの取引がリースとして扱われるようになりました。

リースに該当する取引は、原則としてすべてオンバランス処理(ファイナンス・リースの会計処理)になります。リース期間についても、契約更新や契約解除などの可能性を考慮してリース期間を決定するという考え方が基本です。

また、以下の要件を満たすと「リース」に該当します。

  • 特定された資産の使用を支配する権利があること
  • 一定期間にわたり使用する権利があること

従来はリースとして扱われなかった一部のサービス契約も、この要件によってIFRS16号の下ではリースに該当する可能性があります。そのため、企業は既存の契約を慎重に見直し、IFRS16号の定義に基づいてリースを識別することが求められるでしょう。

全リースのオンバランス化による3つの変化

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IFRS16号の導入により、原則としてすべてのリース取引がオンバランス化されます。すべてのリース取引がオンバランス化することによる変化は、下記の3つです。

  • 貸借対照表の総資産と総負債が増加する
  • 賃借料ではなく支払利息と減価償却が計上される
  • 賃借料がリース負債返済処理になるためキャッシュフローの区分が変わる

一つずつ見ていきましょう。

貸借対照表の総資産と総負債が増加する

IFRS16号では、原則としてすべてのリース取引について、借手は使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上する必要があります。これは、従来のオペレーティング・リースとファイナンス・リースの区分を廃止し、すべてのリースをオンバランス化する考え方が反映されています。

従来オフバランスだったリース取引も含めて資産と負債を認識することになるため、貸借対照表の総資産と総負債が増加する傾向があります。

これは、企業の財務諸表に大きな影響を与え、財務比率などの指標にも変化をもたらす可能性があります。

賃借料ではなく支払利息と減価償却が計上される

IFRS16号では、リース取引に関する費用は、使用権資産の減価償却費とリース負債に対する支払利息として計上されます。これは、リースを実質的な資産の購入とみなし、その資金調達としての側面を反映させる考え方に基づいているからです。

IFRS16号を適用すると、リース期間の初期に支払利息が多く計上され、その後期間の経過とともに支払利息計上額は減少していきます。減価償却費についても、計算方法によっては支払利息と同様にリース期間の初期の計上額が多くなるため、そうなるとリース期間の前半は減価償却費と支払利息の合計が従来の賃借料よりも大きくなる可能性があります。

このようにIFRS16号適用企業では、リース取引に関する費用認識のパターンが変化することで、特にリース期間の初期において利益が押し下げられる可能性があります。

賃借料がリース負債返済処理になるためキャッシュフローの区分が変わる

IFRS16号では、リース負債の返済による支出は、財務活動のキャッシュフローに分類され、リース負債にかかる利息の支払いは営業活動または財務活動によるキャッシュフローに分類されます。

そのため、IFRS16号を適用する企業では、従来営業活動に分類されていたキャッシュフローの一部が財務活動に移動することになり、営業活動によるキャッシュフローを増加させる要因となります。

IFRS16号を適用した結果、キャッシュフロー計算書の各区分の金額が変動し、フリーキャッシュフローなどの指標にも影響を与えるかもしれませんが、企業の資金調達活動やキャッシュマネジメントの実態を、より適切に反映できると考えられています。

IFRS16号(リース)に必要な準備

IFRS16号(リース)に必要な準備

現在の日本において、決算のときにIFRSを適用するかどうかは、企業側に任されています。IFRS16号を適用すると、経理の業務負担が増えてしまう可能性があり、事前に導入における必要な準備を把握しておくことが大切です。

IFRS16号(リース)を導入する場合に必要な準備は、以下の2つです。

  • 今のリース状況を整理し把握する
  • 対応方針や業務設計等の再構築

それぞれ詳しく解説します。

今のリース状況を整理し把握する

IFRS16号への対応の第一歩は、現在の企業のリース状況を整理し、包括的に把握することです。なぜなら、リース取引の全体像を把握することで、IFRS16号適用によるメリットや問題などを正確に評価できるからです。

まずは、以下のような作業をおこなうと良いでしょう。

リース契約の棚卸し すべての部門や子会社を含め、現在締結しているリース契約を洗い出す。不動産、車両、機器などの有形資産だけでなく、ソフトウェアなどの無形資産も対象。
契約内容の精査 各契約がIFRS16号の「リース」の定義に該当するかを確認。サービス契約の中にもリース要素が含まれている可能性があるため、慎重な検討が必要。
リース条件の確認 リース期間、支払額、更新オプション、変動リース料などの詳細を確認。これらの情報は、使用権資産とリース負債の計算に必須。
影響度分析 IFRS16号適用による財務諸表への影響を試算。特に、総資産、総負債、EBITDA、財務比率などへの影響を把握。
システム対応の確認 現在の会計システムやITインフラが、IFRS16号に対応できるかを評価。多くの場合、システムの更新や新規導入が必要。

リース状況を整理し把握できれば、企業に適したシステム運用を実現できるでしょう。

対応方針や業務設計等の再構築

IFRS16号の導入は、単なる会計処理の変更にとどまらず、企業の業務効率や経営者の意思決定にも大きな影響を与えます。

そこで、対応方針や業務設計などの再構築を通じて、円滑にIFRS16号へ移行できるように準備を進める必要があるでしょう。

例えば、以下のような準備が必要です。

プロジェクトチームの編成 財務部門だけでなく、法務、IT、調達など、関連部門を巻き込んだプロジェクトチームを編成。経営層の関与も大切。
会計方針の策定 IFRS16号に準拠した新たな会計方針を策定。リースの定義、短期リースや少額資産リースの免除規定の適用、割引率の決定方法などを明確化。
業務プロセスの見直し リース契約の締結から会計処理までの一連の業務フローを再設計。特に、契約管理、データ収集などが中心。
システム対応 新基準に対応できるよう、会計システムやITインフラを更新または新規導入。リース管理システムの導入も検討。
内部統制の整備 新たな業務に対応した内部統制を構築。特に、リース情報の網羅性や正確性を担保する統制が重要。
教育・トレーニング IFRS16号の概要や新たな業務についての社内教育を実施。
影響評価と経営戦略の見直し IFRS16号適用による財務指標への影響を踏まえ、必要に応じて経営戦略やKPIを見直す。

これらの準備を進めることで、IFRS16号下での効果的なリース管理体制を構築していくことができるでしょう。

IFRS16号に向けてシステムの導入を検討する

IFRS16号に向けてシステムの導入を検討

IFRS16号の適用に伴い、多くの企業にとってシステムの導入や更新が必須となります。従来の会計システムでは、増大するデータ量や複雑な計算処理に対応しきれない可能性が高いからです。

リース管理システムを導入することで、以下に対応できるメリットが期待できます。

  • 大量のリース契約データを効率的に管理・集計
  • 使用権資産、リース負債、減価償却費、支払利息の自動計算
  • リース期間や割引率の変更に伴う再測定の自動化
  • 開示資料の作成支援
  • 内部統制の強化と監査対応の効率化

システム導入は初期投資が必要ですが、長期的には業務効率の向上とコンプライアンスリスクの低減につながるといった効果が見込めます。

まとめ

IFRS16号に向けてシステムの導入を検討

IFRSとは国際財務報告基準のことであり、グローバル化が進む経済環境において必要な国際的な会計基準です。

IFRS16号は、IFRSの中でリース取引に関する会計処理を規定した基準であり、原則としてすべてのリース取引をオンバランス化しています。すべてのリース取引のオンバランス化により、企業の財政状態が明確になり、リース取引の会計処理が統一されて企業間の比較が容易になる効果があります。

IFRS16号を適用するにあたっては、今のリース状況を整理して把握し、対応方針や業務設計等の再構築を行うことが大切になります。リース管理システムを新規導入するなどの検討も必要となるでしょう。

IFRSの導入を準備している企業は、制度の内容や検討すべき事項などを確認し、円滑にIFRS16号へ移行できるように準備を進めていきましょう。

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