よくわかる!新リース会計基準ガイド
会計方針や業務プロセスを検討しよう

自社の会計方針をどう定めるかによって、その後の大変さが決まることに

新リース会計基準はIFRS16と同等となり、会計方針の策定に際しては見積要素や重要性の範囲など、企業毎に検討する要素が多く存在します。自社で策定した会計方針が、適用の影響額は勿論、その後の業務やシステムにおける複雑性を決めると言っても過言ではありません。

会計方針策定にあたっての代表的な論点は次の3つです。


(1)リース期間

従来は「リース契約に明記されている期間」を対象としてリース負債を計算していましたが、新リース会計基準では自動更新などにより「延長」されたり、「解約」されたりする可能性が合理的に確実な場合には、契約での取り決めとは異なる期間にてリース負債を計算する必要があります。「延長」「解約」の論点はその企業における経営方針次第で決まる要素であり、これにより影響額が大きく変わるため、適用にあたっての影響額を最も左右する会計論点となります。そのため、早期に複数のシミュレーションをした上で、合理的なリース期間を見積り、担当の会計士と協議していくことが重要となります。

(2)重要性に関する定め

新リース会計基準では、現行のリース基準で認められている「300万基準」「利息相当額の簡便的な扱い」「再リースの会計処理」はいずれも踏襲されます。そのため、現状のファイナンスリースのオンバランスの範囲は、ほとんど変わらずに対応することができます。

ここで課題になるのがオペレーティングリースに分類されている不動産リースです。不動産リースは契約料の総額が300万を超える契約も多く、また不動産リースの金額が大きい場合には重要性が上がるため、従来の利息認識をしない会計処理を選択していた企業は、利息を認識する会計処理へ変更を求められる可能性があります。そのため、不動産リースを含めた重要性の基準を早期に見積もり、方針を決定していくことが重要です。

(3)リースの適用の範囲

新リース会計基準におけるリースの定義は「原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分」です。(「原資産」とは、リースの対象となる資産で、貸手によって借手にその資産を使用する権利が移転されているものをいいます。)

新リース会計基準適用後は、契約の締結時に、その契約が「リースを含むか否か」の判断が必要となります。そのためリースとなる可能性のある契約を早期に洗い出して、リースの種類別に適用の可否を決めていく必要があります。

契約がリースを含むか否かの判断

契約が、特定された資産使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、その契約はリースを含むことになります。


①特定された資産かどうか

資産は、通常は契約に明記されることにより特定されます。

顧客が使用することができる資産が物理的に別個のものではなく、資産の稼働能力の一部分である場合には、その資産の稼働能力部分は特定された資産に該当しません。

ただし、顧客が使用することができる資産が物理的に別個のものではないものの、顧客が使用することができる資産の稼働能力が、その資産の稼働能力のほとんどすべてであることにより、顧客がその資産の使用による経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有している場合は、その資産の稼働能力部分は特定された資産に該当します。


②資産の使用を支配する権利が移転しているかどうか

特定された資産の使用期間全体を通じて、次のいずれも満たす場合、その資産の使用を支配する権利がサプライヤーから顧客に移転します。

a. 顧客が、資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有する。

b. 顧客が、資産の使用を指図する権利を有する。


リースに該当するか否かは、下記に示すフローチャートに則って判断することができます。

リース識別のフローチャート


IFRS16適用時を参考にすると、契約書の洗い出しは主に本社経理部が主体となって進める必要があります。
まずはリースに該当するかどうか、また該当する場合でも契約種類毎に重要性等の基準を鑑み、適用可否を担当の会計士と協議していくことが重要となります。

業務プロセスの変更点

借手のリース契約は、今後使用権資産として固定資産と同様の計上プロセスに変更する必要があります。下記図に示す通り、検収以降の業務フローについて、資産計上・減価償却のタスクが追加され、仕訳の内容等も変更となります。

また不動産リースにおける賃料変更や契約更新などの契約変更はダイレクトにB/S残高の修正が必要となるため契約締結部門と経理部門における相互の業務プロセスの構築が必要となります。

検収以降の業務フロー

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