IFRS16適用事例を基にした、適用までの過ごし方
IFRS16適用事例から導き出される、改正リース会計基準適用までのプロセスは図①に示す通りです。
これは適用までに3年かけて対応する場合の例であり、各フェーズの線引きは自社の状況に合わせて変動することになります。
図①:適用に向けた準備プロセスの例(2026年度より適用となった場合を想定)

フェーズをⅠ~Ⅳに区分した場合、フェーズⅡまでは会計方針の策定、フェーズⅢ以降はシステム構築に関するプロセスがメインとなります。改正リース会計基準はリースも固定資産と同様の管理が必要となることから、多くの企業でシステム対応が求められると想定されます。
システム対応は子会社への展開を含めると1年程度かけて対応するケースも多く、強制適用を仮に2026年度と仮定した場合には2025年度がシステム対応期間に該当します。そのため前半戦にある会計方針の策定を2024年度までに実施することが理想となります。
IFRS16適用初期は、当時はまだノウハウも少なかったことから、自社の会計方針の策定とシステム導入を同時並行的に進めたプロジェクトも多く存在しました。しかし結果として会計方針を決めることに時間がかかり、システム構築の手戻りが多く発生した事例も少なくありません。
そのため、業務やシステム影響のある会計論点に対していかにフェーズⅡまでに自社の方針を策定するかが、品質の高いプロジェクトを進めるための重要事項となります。
適用初年度の会計処理
改正リース会計基準の適用初年度には、どんな会計処理をする必要があるのでしょうか?
改正リース会計基準の適用初年度の会計処理は、図②の通り2種類の会計処理が認められています。
図②:適用初年度の会計処理(2026年度より適用となった場合を想定)

原則は、適用初年度以前の契約も過去に遡って会計処理を行う完全遡及アプローチです。しかし実務負担を考慮して、過去には遡らず適用初年度以降の残存リース期間を対象として会計処理を実施する修正遡及アプローチも認められています。
IFRS16の適用では、多くの企業が修正遡及アプローチを採用しています。修正遡及アプローチは、適用初年度の未経過リース料を基に割引計算を行って使用権資産とリース債務における帳簿価額を算出し、その金額を適用初年度の期首にシステム移行した上で管理をしていく必要があります。
いずれにせよ適用準備にあたっては、以前に締結した契約であっても、適用初年度に継続中の契約は影響がある点に注意が必要となります。
対応には十分な準備期間を
改正リース会計基準は財務指標や業務に与えるインパクトが大きく、現行の業務プロセスの変更や海外を含めた子会社のルール整備が必要になることが、IFRS16の事例からも明らかです。
また、会計処理では割引計算・利息計算・償却計算が必要になるため、EXCEL管理が難しい場合はシステム対応の検討も進める必要があります。これらの理由から、IFRS16においては準備期間を3年程度かけて実施した企業もあります。いずれにせよ、まずは適用にあたり自社の業績に与えるインパクトの試算が欠かせません。
特に不動産リースが多い企業にとっては影響額が大きくなるため、早期に試算を行い経営者への報告を行った上で、自社にとって最適な適用までのスケジュールを検討することが重要となります。