お役立ち情報 2024/12/05 IFRS適用による固定資産管理への影響とは? 固定資産管理 企業は多くの固定資産を保有しており、効率よく正確に固定資産の管理を行うことは企業の課題です。また、日本基準での会計処理の内容が、国際的な会計基準であるIFRSへ準拠する動きも進んでいます。 そのため、将来に備えてIFRSの詳細を知りたい企業担当者は多いでしょう。 本記事では、IFRSの適用による固定資産管理への影響や、IFRS適用企業の固定資産システム導入事例について解説します。 固定資産管理について IFRSを適用すると、固定資産管理には大きな影響があります。最初に固定資産管理の定義についておさらいしておきましょう。 そもそも固定資産管理とは 固定資産管理とは、企業が所有している土地、建物、設備、機械などの固定資産を適切な方法で管理し、その状態や価値を正確に把握することです。具体的には、固定資産の取得、登録、減価償却、除却、売却などの一連の過程を管理し、財務諸表の作成や税務申告に必要な情報を提供します。 適切な固定資産管理は、減価償却費や税金の計算を正しく行うためにも不可欠です。また、固定資産の効率的な活用や将来的な設備投資の計画を策定するためにも重要です。 IFRSを適用すると、固定資産の耐用年数や減損処理などが変更になるため、注意が必要です。 固定資産は次の3種類に分類されます。 有形固定資産 無形固定資産 投資その他の資産 有形固定資産 有形固定資産とは、自社で使用する土地、建物、車、機械や設備など、形があって目に見える固定資産のことです。販売が目的の不動産会社の土地などは、自社で使用するための資産ではないため固定資産には該当しません。 有形固定資産は、「減価償却資産」と「非減価償却資産」に分類されます。減価償却資産は時間とともに価値が減少しますが、非減価償却資産の場合は価値が変わりません。 無形固定資産 無形固定資産とは、営業権、特許権、ソフトウェアなど、形のない固定資産のことです。無形固定資産も、有形固定資産と同じく、「減価償却資産」と「非減価償却資産」に分類されます。 減価償却資産にはソフトウェアや特許権のように技術の進歩により年々価値が減少するものが該当し、借地権など時間経過で価値が下がらないものは非減価償却資産となります。 投資その他の資産 有形固定資産や無形固定資産のどちらにも当てはまらない固定資産は、「投資その他の資産」となります。投資有価証券や関係会社株式、出資金、長期貸付金などが該当します。 このような資産は、有形・無形の区分に当てはまらなくても、企業が長期的に保有する資産であるため、固定資産の一部として扱われます。 プロシップの総合固定資産管理ソリューション ProPlus 選ばれる理由やお客様のお声など、詳細はこちらからご確認ください。 IFRSについて 2010年にIFRSが日本でも任意適用できるようになってから、徐々にIFRSを適用する日本企業が増えてきました。まずはIFRSの基本と、なぜ日本企業がIFRSを採用するのかについて解説します。 IFRSとは「国際財務報告基準」のこと IFRSとは、国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards)の略称で、現在グローバルスタンダードとなっている会計基準です。 2005年にはEU域内の上場企業に適用が義務化され、現在130以上の国と地域で採用されています。現在、大きな資本市場を持つ国ではアメリカと日本のみがIFRSを導入していないため、今後の動向が注目を集めています。 日本では2010年3月以降、IFRSの任意適用が可能となりました。現時点では義務化はされていませんが、適用する企業の増加を目指した普及活動が進められています。 日本の企業におけるIFRSを導入する必要性 IFRSを導入することで、国際基準に沿った財務諸表を作成することになります。そうなれば、海外の投資家や取引先にも理解されやすくなり、日本企業に投資をしやすい状況を作れるため、資金調達の幅を広げることが可能です。 さらに、企業によっては国内外の子会社や関連会社で統一した会計基準を使えるようになります。企業全体で財務情報を分かりやすく管理できるようになれば、決算の早期化や、新たな投資や事業拡大をするときの判断もスムーズに行えるようになるでしょう。 IFRSは、EUでの均一化を機に各国で導入が進んでおり、日本でも会計基準をIFRSに合わせる動きが増加しています。日本会計基準とIFRSには考え方の違いがあるものの、今後はIFRSを導入した企業との取引機会に備えて、導入前でも知識を持っておくとよいでしょう。 IFRSでの固定資産管理 IFRSでの固定資産管理は、今まで採用してきた日本基準と多くの点で異なります。ここでは、特に違いを感じやすいポイントを5つ紹介します。 取得原価の範囲が拡大し、輸入関税や登記費用などを含める必要がある 実態に基づく減価償却方法と耐用年数の見直し コンポーネントアカウンティングが要求される 無形資産の耐用年数の評価 減損後、回復の兆候がある場合は減損の戻入れを行う 取得原価の範囲が拡大し、輸入関税や登記費用などを含める必要がある 日本基準とIFRSでは、固定資産の取得原価の構成要素に違いがあります。日本基準では、輸入関税、登記費用などは取得原価に含めませんが、IFRSではこれらの費用が含まれます。 IFRSにおける有形固定資産の取得原価は、原則として「購入価格」「直接起因コスト」「資産除去コスト」の3つで構成され、場合によっては借入コストも加算されます。 購入価格は資産に支払った金額となり、分割払い購入の場合は利息分を除きます。直接起因コストは、資産を稼働できる状態にするために直接的に発生するコストを指します。資産除去コストとは、資産の解体や除去、敷地の原状回復に必要となるコストの、取得当初の見積額です。 実態に基づく減価償却方法と耐用年数 日本の会計基準と比べ、IFRSでは固定資産管理のルールが大きく異なります。その一つが、減価償却方法と耐用年数の評価です。 まず、減価償却方法について、日本基準では「所定の計画的・規則的な方法のなかで会計方針として選択する」とされており、特段制限がありません。そのため、税務メリット(資産を取得した直後の減価償却費が大きくなる)を考慮して、定率法を採用している企業が多い傾向にあります。 しかし、IFRSでは「使用される減価償却方法は、資産の将来の経済的便益の予測消費パターンを反映するものでなければならない」とされており、定率法を使い続けることが難しい状況があります。また、将来の経済的便益の消費パターンを予測できない場合は定額法を採用することが多いため、IFRS適用企業の多くは定額法を採用しています。 耐用年数については、日本基準での原則は経済的耐用年数ですが、実務上は法人税法に定められた法定耐用年数の利用が認められているため、多くの企業で法定耐用年数が採用されています。しかしIFRSでは経済的耐用年数が適用されるため、従来採用している耐用年数と経済的耐用年数とに乖離があるか、検討が必要です。 さらに、IFRSでは減価償却方法、耐用年数、残存価額の見直しを毎年行うことが求められます。これに対し、日本基準では定期的に見直すことはありません。IFRSでは、資産の実態に即した評価がされているかどうかを定期的に再評価し、実際の状況に合わせて調整する必要があります。 コンポーネントアカウンティングが要求される IFRSではコンポーネントアカウンティングが要求されるのも特徴です。コンポーネントアカウンティングとは、有形固定資産の重要な構成部分について、個別に償却を行う方法です。 この方法では、各資産項目の耐用年数を個別に決定し、別々に償却計算を行います。IFRSの適用にあたっては、資産の重要な構成要素の把握や区分の方法等、一定の基準を企業ごとに決定する必要があります。 例えば、鉄道車両の場合、日本基準では車両単位で償却します。コンポーネントアカウンティングでは、車両本体、モーター、パンタグラフ、窓、ドアなどに区分されます。それぞれ耐用年数が異なるため分けて管理します。 この点を十分に理解し、IFRSへの移行を進めることが重要です。 無形資産の耐用年数の評価 無形資産の耐用年数の決定においても、日本基準とIFRSでは異なる点があります。 日本基準では、原則として経済的耐用年数を適用しますが、実務では税法上の耐用年数が使用されることが多いようです。 一方、IFRSでは、企業は無形資産の耐用年数が確定できるかどうかをまず評価し、確定できる資産と確定できない資産を区別して処理をする必要があります。 耐用年数が確定できる無形資産については減価償却を行い、耐用年数が確定できない無形資産については償却を行いません。 耐用年数が確定できない無形資産は償却をしない代わりに、毎年、帳簿価額と回収可能価額とを比較する減損テストを実施する必要があります。 減損後、回復の兆候がある場合は減損の戻入れを行う 減損とは、固定資産の実質価値が大きく下がった際に帳簿価格の引き下げを行うことです。減損を処理した後に固定資産の価値が回復したときの処理方法が、日本基準とIFRSでは異なります。 日本基準では、一度計上した減損損失を以前の帳簿の価格に戻し入れることは認められていません。一方、IFRSでは、減損の原因となった事実が将来のある時点で存在しなくなる、または減少した場合は減損の戻し入れが必要になります。 IFRSで実施する戻入れの上限額は、その資産が減損せずに本来の減価償却を続けていた場合の帳簿価額になるまでの金額です。戻入れの調整額は、その期の収益として計上されます。 プロシップの総合固定資産管理ソリューション ProPlus 選ばれる理由やお客様のお声など、詳細はこちらからご確認ください。 IFRS適用企業の導入事例 ここでは、IFRSを適用済みの企業の導入事例を2つ紹介します。IFRSの導入で浮き彫りとなった課題に対応するために、弊社の固定資産システムを導入しました。課題を解決した成功事例として、ぜひ参考にしてください。 コメダホールディングスの子会社である株式会社コメダは、企業成長に伴う基幹業務システムの見直しの一環として、固定資産管理システムを刷新しました。 同社は2016年の株式上場に合わせてIFRSを導入しており、今後の成長に対応し、内部統制を強化できるシステムが求められていました。そこで導入したのがコストと機能のバランスに優れ、専業ベンダー製品である「ProPlus固定資産システム」です。 現在は連動仕訳の実現により業務負荷が大幅に軽減され、IFRS対応業務においても高いシステム利用効果を実感しています。信頼性の高い固定資産管理システムを導入することで、IFRS導入企業としての業務負荷軽減と内部統制強化を実現しました。 詳細はこちら 楽天銀行株式会社は、楽天グループでのIFRS対応が決定したことを機に、会計システム全体の刷新を決定しました。 これに伴い、固定資産管理業務も本格的にシステム化することになり、システム選定を進めました。その結果、複数帳簿に対応する機能の完成度、基本機能、オペレーション支援機能の充実といった点が高く評価され、「ProPlus固定資産システム」をはじめとするProPlusシリーズを採用しました。 ProPlusシリーズの導入により、楽天銀行の固定資産管理業務がリニューアルされ、生産性が大幅に向上しました。特に、償却資産税申告作成にかかる時間が3日から半日に短縮されるなど、目に見えて効果が現れています。 詳細はこちら まとめ 企業が自社の固定資産を適切に管理することは、正確な財務諸表の作成や税務申告の観点からも大変重要です。 IFRSでは、固定資産の減価償却方法や耐用年数などは、より実態に即した対応が求められます。また、他にも日本基準とは異なる点があるので注意が必要です。 今回ご紹介したIFRS適用済み企業のように、固定管理システムを導入して業務の負担軽減や内部統制の強化に成功した企業も多く存在します。IFRS適用を検討中の企業も、自社の状況を踏まえ、将来の導入に備えて固定資産管理体制を整えていくことが大切です。 IFRSに対応した固定資産管理システム・リース管理システムをお探しなら、プロシップの「ProPlus固定資産システム」をぜひご検討ください。ProPlusは、企業が保有する固定資産を、会計・税務・現物など、総合的な観点で管理するシステムソリューションです。その専門性の高いサービスをご評価いただき、IFRS適用企業の3割が、ProPlusを利用しています。 興味がある方は、「総合固定資産管理ソリューション ProPlus」の詳細をご確認ください。 プロシップの総合固定資産管理ソリューション ProPlus 選ばれる理由やお客様のお声など、詳細はこちらからご確認ください。 お役立ち情報の一覧 に戻る 関連製品 ProPlus固定資産システムノウハウを集結し、あらゆる業種・業態の企業にマッチする固定資産管理機能を豊富に搭載。企業のIFRS適用も強力に支援。詳細を見る 導入事例 各業界の大手企業、2社に1社がProPlusを採用しています。上場企業を中心に、あらゆる業種、業態、規模の企業に幅広く導入されています。 導入事例を見る セミナー情報 プロシップでは定期的に、固定資産管理に関連するセミナーを開催しています。 セミナー情報を見る